オフシーズンの礼文島で孤独を愉しむ
目次
礼文島にずっと行きたかったお話
私ネットでのユーザー名「うすゆき」なんです。
で、ドメインを取ろう!ってusuyukiを探していた時にusuyuki.jpのサイトになっていた「うすゆきの湯」を知りました。
(現在usuyuki.jpは「うすゆきの湯」ではありません!)
私の「うすゆき」は適当に打って編み出した文字列な訳ですが、他で「うすゆき」という文字列を見るとおぉ!ってなります。そしてその「うすゆきの湯」は礼文島にありました。
礼文島は日本最北端の島で、北海道の最北稚内からさらにフェリーを使って行く程の大変遠い場所です。
時は高校3年生です。卒業旅行に礼文島に行きたいと夢見ていました。
しかし未曾有の新型ウイルスで卒業旅行は吹っ飛び、その後夏休みに改めて予定を立てました。
夏休みは予約までして、あとは行くだけの段階で緊急事態宣言と感染爆発により、キャンセルすることにしました。
そして時は流れて2022年春、今行かなければ一生行けないんじゃないかという衝動に駆られて、行くことにしました。
概要
感染症対策を講じた上で取り組んでいます。
日数 | 概要 |
1日目 | 移動(宇都宮→大洗→苫小牧) |
2日目 | 移動(苫小牧→旭川) |
3日目 | 移動(旭川→稚内→礼文)、礼文島観光 |
4日目 | 礼文島観光 |
5日目 | 移動(礼文→稚内→東京→宇都宮) |
帰りは空路を使いましたが、費用を抑えるために行きは陸路と海路です。
そんなこともあり、礼文島まで3日掛かりで行きました。
3月14日に発生した福島県沖を震源とするM7.3の地震で当初の予定を変更しています。
元々は青春18きっぷで宇都宮→稚内を移動するつもりでしたが、該当区間の不通のため青春18きっぷの利用は苫小牧→稚内間に変更しました。(不通じゃなくても被災地域を旅行で利用するのは倫理観ぶっ飛んでるので、どちらにしても断念ですが……)
一方、北海道では揺れの被害が無いことから旅自体は断念しませんでした。
そこで、茨城県の大洗から北海道の苫小牧までを結ぶフェリーで行くという手段を取りました。
行きの経路
※画像はフリー地図の白地図専門店より
1日目
移動(宇都宮→大洗→苫小牧)
大洗
前日までインターンに行っていたため、当日の午前に旅の準備をして、午後に出発です。
宇都宮→水戸は青春18きっぷ1回分より安価なので、普通に運賃を払います。
水戸→大洗は鹿島臨海鉄道大洗鹿島線を利用します。強そうな名前ですね。
霧雨の中、フェリーターミナルに到着です。
今回苫小牧まで乗船する「さんふらわあ」は商船三井のフェリーです。
商船三井って財閥感すごいですね……
とても大きい。
2番目に安い客室で、他の人と同じ部屋だけど半個室的になっている形です。
茨城県→北海道を1万円ちょっとで移動できて、お風呂も付いて横になれると考えるとお得ではないでしょうか。
初の大型客船に心が踊ります。19:45発です。
半個室とはいえ、ちゃんとテレビもコンセントもあります。
船の中でサウナに入ったり、お風呂に入ったり。
船内の夕食は2000円のビュッフェ形式のみで、流石に断念しました……手の届かない金額です……
一方でお外は低気圧の影響で荒れ狂う太平洋です。
とんでもなく船が揺れます。
波が船5階の窓に当たる程で、雨も真横に流れていきます。
外に出たら確実に生きて帰れないですね……
大型船なので小刻みと言うよりはπ/6ラジアンずつ一定周期で上がったり下がったりしている形で、一番近いのはエレベーターの任意の階を押され続けているみたいな内蔵に来る揺れです。
「宇宙よりも遠い場所」というアニメの南極に行く船で苦しむシーンが思い出されます。
これは酔いで死ぬ……と思い早めに寝床につきました。
次の便は欠航になっていたので、行けただけありがたいと思うしかないです……
2日目
移動(苫小牧→旭川)
フェリー
船のエンジンによる?揺れと、この荒波による揺れで死にかけていたのですが……
何度か寝て起きてを繰り返すと回復していました。
朝食には売店で買ったうどんを食べました。150円です。
記念にドクターペッパーも。選ばれし者の知的飲料です。
お昼は船内の食堂的な所でいただきました。コーヒーとパンです。優雅ですね。500円でした。
船の中では途切れ途切れのネットでTwitterを見たり、読書をしたりしていました。
共同部屋ではほぼ圏外だったのですが、パブリックスペース的な部分ではほぼ電波来ていました。恐るべしインフラ……
青森県沖から苫小牧までの陸地から離れる区間は流石に無理でしたが……
苫小牧
お昼過ぎに苫小牧港へ着岸です。
昨日の20時前に出て14時前到着で、19時間程度とかなり長い時間を船で過ごしました。
低気圧の影響で船が遅れてしまい、苫小牧駅行きのバスには間に合いません。
かといって歩きだと50分くらい掛かるので、ここは腹を括ってタクシーで駅まで。
1590円の出費は、極寒の中重たい荷物を持って歩くことに比べれば随分マシです。
東京では桜の開花が宣言されてた頃ですが、北海道では雪が降りしきっています。寒い。
苫小牧駅からは青春18きっぷで旭川駅まで向かいます。
列車の中は温かいですが、外には一面の雪景色が広がります。
普段買わないカフェオレなんかを買ったり……
旭川
なにはともあれ、旭川に到着です。駅の大きさと綺麗さにびっくりしました……
併設されているイオンモール旭川で北海道のお菓子を買ったり……
夜ご飯を食べたり……
朝ごはんを調達したり……
北海道限定の「コアップガラナ」も買いました。
ドクターペッパーよりも薬感の強い不思議な味わいです。
3日目
移動(旭川→稚内→礼文)、礼文島観光
旭川から稚内まで青春18きっぷを使います。
旭川発稚内行きの普通列車は1日1本で06:03発です。
稚内まで乗り換え不要で6時間4分の乗車です。日本でもトップクラスの長さを誇る普通列車です。
洗練された旭川駅のプラットフォームより出発です。
列車は雪の中を駆け抜けます。乗客はまばらです。
名寄駅です。時刻はまだ7時台です。
雪に足跡を付けるのが楽しいですね。
名寄駅での停車時間にコーヒーを買いました。
名寄駅からは列車が2両から1両になります。
それでもなお、ソーシャルディスタンスを取って座れる程の乗車率です。
列車は雪国を進みます。
宗谷本線でも有名な秘境駅「糠南」です。
去年受けた波動電磁気学の先生のZOOMの画像がこの駅だったことを思い出します……
時々野生のエゾシカを見ることができました。写真は撮れませんでしたが……
途中、幌延(ほろのべ)駅で長期停車になります。
座りっぱなしも良くないので、改札を抜けて外へ。
謎の飲料を買いました。北海道限定で、北海道の素材で作られているみたいです。
ついに海岸線が見えてきました。
稚内
お昼時に稚内駅へ到着です。
6時間は正直あっという間でした。
見慣れない景色と読書で時間は一瞬にして過ぎ去りました……
6時間乗車した列車ともおさらばです。
稚内駅の外へ出てみます。
端っこまできた感がすごいです。
稚内港北防波堤ドームを見に行きました。
日本じゃない感がすごいです。ローマかどこかに来たのかと錯覚させられます……
お昼は「たからや」さんの塩ラーメンをいただきました。
透き通るスープであっさりしています。
フェリー
遂に目的にの礼文島へ向かいます。
出発3日目で、やっと目的地最後の乗り換えです。
フェリーターミナルへ向かいます。
一番安い二等自由席を購入しました。礼文島の香深港まで2850円です。
ちなみに香深は「かふか」と読むのですが、村上春樹著「海辺のカフカ」とは一切関係ありません……!
「海辺のカフカ」のカフカはチェコ語でカラスという意味から来ているみたいですね。
感染防止対策で二等自由席のきっぷで二等指定席も利用できるとのことだったので指定席に座りました。
ガラ空きです。
またしても荒波です。苫小牧まで向かったフェリーより小型ということもあり、揺れも高頻度です。
確実に酔いました……
ともあれ2時間程で礼文島へ到着です。
ふと見渡すと誰も乗っていません。部屋を独り占めしていました……
船から降りた人の数を見た感じ自分含めて6人程度でした。
ほとんどが軽い荷物だったので、おそらく地元民のようです。
こんな時期に礼文島に観光に来る人は稀有な存在なのかもしれません……
香深
ゆるキャラのような人物が迎え入れてくれました。
一人旅なので顔入れるタイプの看板では写真が撮れません……
礼文島は遺跡も有名なんです。縄文時代の顔復元には礼文島での発掘が一役買っていたりします。
そして、ほとんどお店が閉まっていました……
貴重な開いていたお土産屋さんで「レブンウスユキソウ」のバッチを買いました。
島で唯一この時期にネット予約できた宿「しまのやどれぶんしり」でチャックインをします。
ちなみにれぶんしりという名前はアイヌ語で沖の島を意味するレプンシㇼから来ているみたいです。
島中でウミネコの声が聞こえます。
楽しみにしていた「うすゆきの湯」です。
なんと、休業中でした……
ネットでちらっと見た感じ冬季も営業しているとのことでしたが、どうやら機械設備工事のため3/24まで休業とのことです。ギリギリで間に合いません……
よくよく見ると礼文町の公式HPにも書いてありました。失念しました。
今日は時間的にも遅いので島の反対側、元地地区まで歩いてみることにとどめます。
元地
全長1.5kmのトンネルを歩きました。
ほとんど車も通らず、ものすごい孤独を感じました……
この感情は筆舌に尽くしがたいものがあります。
比喩で「長いトンネルを抜けた感じがする」みたいな言い方がありますが、あれのリアル版です。
真ん中まで到着。
1人きりのトンネルを15分ほど歩いてやっと出口が見えてきました。
外は日が暮れようとしています。
トンネルを抜けて、さらに15分程歩いてメノウ浜に到着です。
メノウが取れる浜とのことです。
夜も暗く、雪も深く、波も荒く、、、浜辺に行くのは断念です。
ここで死ぬわけには行きません。
先程来た道を戻ります。
また長いトンネルを通って帰ります。
夜ご飯は「ホッケのちゃんちゃん焼き」を食べました。
上に乗っている味噌と焼けたホッケを混ぜて食べるというものです。
宿に帰りました。なんと宿泊客は私1人です。
宿の入り口は夜間も開いているのですが、受付の人は不在です。
なので建物に私1人という、またしても孤独な時間が続きます。
共同浴室、共同トイレだったのですが、独り占めです。
共同浴室で旅の疲れを取り、明日に備え早めに寝ました。
4日目
礼文島観光
島の北へ向かう休日のバスは1日4往復です。
貸切状態のバスで島の北限へ向かいます。
スコトン岬
1時間ほどバスに揺られ、礼文島の最北部「スコトン岬」にやってきました。
すごいところに来たものです……
お店や有名な最北限のトイレもあるのですが、3月中旬ではそのどちらもが閉まっていました……
オフシーズン恐るべし。
ともあれ、端っこのスコトン岬へ向かいます。
恐ろしいほどの強風が吹いていて、飛ばされそうになりながら進みます。
最北限なのは、宗谷岬の方が北にあるからなんです。
スコトン岬はあくまで日本最北端の有人島の最北限という訳ですね。
対岸にはトド島という無人島が見えます。
ロシアは流石に見えません。
カラスとウミネコは居ますが、この場に人間は1人だけです。
またしても独り占めです。
ここでもネットが使えて現代文明はすごいなと思います。
ここでコーディングしてgit push とかすればよかったなという後悔が少しだけあります。
さて、帰りのバスが来るまで3時間あります。
休める場所も無いので、「船泊(ふなどまり)」という街まで歩くことにしました。
8km程の道のりです。
これは日本なのか……と思うほど開けた大地が広がります。
広大な自然です。
避難所や海抜を示す看板があり、災害対策もきちんとされていました。
途中神社に寄りました。雪に足跡を残していきます。
さすがに閉まっていました……
登山コース、行けるところまで行ってみようと思います。
数日前に誰かが訪れたであろう足跡もありました。
夏ではないので、花は見れません……花の浮島で有名な礼文島なのに……!
夏に来ればよかったという後悔がじわじわと頭を占領していきます。
反対側の海辺も見れましたが……雪も深くこの先に行くことは断念しました。
船泊への道へ戻ります。
舗装された道を歩きます。
まばらに住宅も見受けられます。
海は荒れています。冬の日本海です。
時たま映画の最初に出てくる「東映」のロゴの背景の荒波みたいなレベルの波が立ちます。
船泊まではあと6kmとのことです。
オフシーズンということもあり、観光客向けの施設はほぼなしです……
少し前にTwitterで流行った「今日もぐんぐんグルトは買えませんでした」状態を超えて、そもそも自販機の電源が入っていませんでした……
歩道が雪で埋め尽くされています。
車道よりの歩道ではなく、歩道よりの車道を歩きます。
遂にあと2kmに……!
奥に見える島の端から歩いて来たことを考えると感慨深いものです。
トイレすらも閉鎖されています……
流石に疲れてきて、写真も減ります……
船泊
船泊地区に到着です。街に来た感じがすごいです。
休める所が無く、死を覚悟しながら歩き続けていた所「お休み処 談」というお店がありました。
またしても冬季休業かと思いながらお店を見ると「OPEN」の文字が……即入店しました。
暖房も聞いており、トイレもあり、まさにオアシスです。
カレーを頂きました。写真はないです……
船泊で食料品が売っているお店を見つけ、お菓子を買いました。
少し高めのお値段設定でした。
離島だからってべらぼうに高いわけではないのがすごいです……
ここからはバスに乗って宿やフェリーターミナルのある香深地区まで帰ります。
爆睡しました……
香深地区では「うのず製菓」というお店が開いていたので、名物の礼文まんじゅうを買って宿に帰りました。
差閉
宿で一休みして、今度は島の南側に向かいます。
天候にも恵まれ、利尻島の利尻富士が見渡せます。
「北のカナリアたち」という映画のロケ地に関する施設があるのとことですが、冬は閉まっています。
ですが利尻富士が綺麗に見えるとのことで、近くまで歩いて行くことにしました。
到着を前にバスの時間が迫ってしまったので、途中で引き返しました……
歩いて帰るのは、流石に体力が持ちません……文明の利器(バス)を使います。
レブンウスユキソウ
さて、お次は島の中央部、レブンウスユキソウの群生地へ向かってみます。
まだ開花の季節じゃないのですが……
「うすゆき」という名前を使っている身としては、行くだけ行ってみたいという魂胆です。
途中で進入禁止になっており、行けませんでした…………
オフシーズンなのでしょうがありません。
途中「礼文うすゆきの湯」の源泉を見つけました。
温泉には入れないのですが……
さて、宿に戻ります。
宿泊した香深付近の飲食店、1店舗しか開いておらず、そこも昨日行った所だったので宿でカップ麺をすすることにしました。
近くの商店でお菓子とカップ麺を買ってお部屋で食べます。
はるばる3日掛けていつもと変わらない食事をするというのもある意味贅沢です。
その後はのんびりパソコンをポチポチしたり本を読んだりして過ごしました。
離島でもネット使えるのすごいです……海底ケーブルに感謝です。
5日目
移動(礼文→稚内→東京→宇都宮)
香深
ついに帰宅します。
フェリーに乗ります。
ウミネコが船の移動に合わせて飛び立ちます。
行きほどは揺れずに稚内港へ到着です。
稚内
フェリーターミナルに併設されているお店でほたてラーメンを食べました。
大きなホタテが美味でした。
バスに乗って、稚内空港へ向かいます。
稚内→羽田便はかなり高額な路線です。
今回はバイト先の方から頂いた株主招待券を利用して半額ほどに抑えましたが、それでも旅の中で最大の出費です……
久しぶりの飛行機に胸が踊ります。
ソーシャルディスタンスが取れる程度にまばらな乗客率です。
稚内を去ります。
エコノミークラスなのにディスプレイが付いていて感動です。
映画や音楽だけでなく、飛行機に搭載されたカメラから外の景色を見ることもできるすぐれものです。
機内Wi-Fiも使えます。本当に、どこでもネットが使える世界です……
ANAのコンソメスープを片手に、オモコロのダヴィンチ恐山こと品田遊著の小説「止まりだしたら走らない」を読みました。味わい深い時間です。
快適な空の旅でした。
東京
季節外れの雪が降った東京に到着です。
行きは3日掛けた道のりが一瞬で終わってしまい、飛行機の素晴らしさを感じました。
電力需要が逼迫しているとのことで、停電が起きる前に急いで帰宅です。
宇都宮までは東武線経由で「東武株主優待乗車証」を利用して、お得に宇都宮に帰りました。
終わり
実は旅行目的での泊まりの旅行をしたのは大学生になって初のことです。
4泊5日の旅は非日常を感じるには十分な長さでした。
ずっと行きたかった礼文島に行けて、これで悔いのない人生になりました。
行き飛行機を使わないことで経費削減を図りましたが、それでもかなりの出費でした……
「オフシーズンの礼文島は良いよ」って方もいますが、私はそうだとは思いませんでした……
確かに雪景色や静かな世界を堪能することはできるのですが、観光向けの施設やお店が軒並みお休みしているため、礼文島の魅力を存分に味わうことはできません。
夏の礼文島に行ってみたいなと思いました。